CASA カサ

アメリカでの児童虐待や育児放棄への対応についての報告

トレーニング1.5続 虐待と育児放棄の定義と区分

児童虐待育児放棄の定義と区分について

 

・身体的虐待

定義:意識的に子供を傷つける、過度な力をかける、見境の無く無謀に生死に関わる危険な状態にさらすこと

指針:説明のつかない青あざ、みみず腫れや傷、完治するまでに段階を得て時間を要する程度の怪我、噛み傷、やけど、骨折、内臓や頭へのダメージ、その他状況を証明できない怪我

 

性的虐待

定義:大人が自らの性欲を満たす為に行う児童との性行為

指針:年齢にふさわしくないほど性についての知識がある、性的なものを示唆する言動、子供からの供述、性器またはその付近に怪我や傷がある、妊娠や性病の兆候、涙や汚れ、血などの跡が顔、体や衣類にみられる、うつ状態、興奮状態、トラウマ的言動、極度の恐怖感

 

・精神的感情的虐待

定義:過度の決まりごとに縛られ収縮されている状態、自分の価値が見出せず、自信もなく、人間関係、友人関係など普通の子供が経験することを経験できない状態

指針:疾患的癖(ゆびしゃぶり、噛み癖、体をゆする、夜尿)、非行、暴言、暴食、暴れる、極端な行動、意見が無く極端に従う、言動が遅い、表情がない、自信がない、自己嫌悪感が強い、鬱、自殺願望、自殺未遂

 

育児放棄

定義:子供に責任のある立場の人間が必要最低限な食事、衣類、住居、医療、教育などを受けさせず、子供の健康や安全を犯す状況を放置している状態

指針:栄養不良状態、予防接種の未接種、歯科検診の欠如、監視監督欠如、継続的な不潔さ、継続的な寝不足、不釣合いな服装、不十分な住居、食事の欠如

 

 

トレーニング1.5 アメリカの現状

 

americanspcc.org

2015年から2016年においてのアメリカの児童虐待育児放棄の現状について

年間で720万件の報告件数のうち

340万人の子供達が何かしらの福祉サービスを受けています

その内75.3%が育児放棄

17.2%が身体的虐待

8.4%が性的虐待

6.9%が精神的・感情的虐待

一番多い年齢は1歳以下(全体の24%)

全体の3分の1が3歳以下

一年で1700人前後の子供が虐待または育児放棄により死亡

これは一日に5人以上亡くなっているという計算になる

 

このような現状の中およそ240万人の子供達がCASAのサポートを受けていると言われています。全米でCASAは7万人登録・活動を行っています。

 

 

 

トレーニング1.4 アメリカの児童福祉法

CASAの授業の中で習ったのは、アメリカでは動物保護法が先に確立され、動物の虐待や飼育放棄を取り締まっていた団体が人間の子供が虐待・育児放棄されているのを発見し保護したことで児童福祉法設立への道が開かれたという歴史があるということです。驚きですね。

 

ここではざっとアメリカの児童福祉法ができあがるまでの動きを時系列で箇条書きにしていきます。

 

1899年 シカゴに一番初めの児童裁判所が設けられる

この頃は主に非行少年等の更生を目指す内容の裁判が執り行なわれていた

 

1910年 レントゲン撮影が発明され医者が体の中の傷等を確認できるようになった

 

1938年 子供に人権が認められる First Laboe Standards Actという法律で児童労働についての取り決めが交わされる

 

1962年 ヘンリーケンプ医師によって暴力を受けた子供の診断方法が確立される

 

1965年 Mandatory reporting laws という法律により虐待や育児放棄の報告義務が施行される

 

1970年初め頃から当時の法律には児童を虐待や育児放棄などから守る効力がないということで徐々に下記のような規定が設けられていく

 

1974年 Child Abuse Prevention & Treatment Act (CAPTA)

意訳:児童虐待防止措置法 

虐待や育児放棄による被害児童への対応の為に初めて国が予算を確保する

虐待や育児放棄の報告義務、虐待や育児放棄に関する公な場での教育、被害児童が裁判所によって保護・措置される手続きの確立、関連する情報や書類に関する機密規約、児童相談所の権限増大等

 

1978年 Indian Child Welfare

国の特別保護地区(インディアン居住区)に対する児童虐待育児放棄に対する規定と規制の確立

 

1980年 Adoption Assistance and Child Welfare Act

意訳:里親や養子縁組を含む児童福祉法

里親や養子縁組の選択方法、プロセスや規定・規制を明確にし、児童相談所や警察が裁判所の承認により児童の親権を取得できるようになった

 

1990年 Indian Child Protection and Family Vioclence Prevention Act

意訳:インディアン児童保護法 家庭内暴力防止法

インディアンの家庭において児童に対する処置や暴力防止方法を明確に確立

 

1994年 Multi Ethnic Placement Act (MEPA)

養子縁組に必要な時期を明記

里親や養子縁組が人種や国籍などによって差別・区別されないように明記

 

1996年 Child Abuse Prevention and Treatment ACT AMENDED (CAPTA)

 意訳:児童虐待防止及び処置方 修正案

 ここでCASAが活躍できる内容が取りまとりました

 

1997年 Adoption and Safe Families Act (ASFA)

意訳:養子縁組安全家庭法

児童に対する安全な生活の場の規定、短期里親の設定、里親に出されるのと同時に永久的な措置を考慮する方法など

 

1999年 Foster Care Independece Act

全ての州で自動が21歳になるまで児童福祉法を適応すること

里親制度に対する国家予算の増額

里親制度の普及に対する活動

里親への助成金の確立・規定

18歳になるまでの医療保険の供給

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーニング1.3続 CASAの規定事項

CASAは下記の事項に同意し遵守することを宣誓します。

 

・裁判所及び法律を守る

・職権乱用や命令違反を犯さない

・活動中にアルコールの影響を受けていてはならない

・オフィスまたはクライアントの敷地内で盗難または誤用を犯してはならない

・クライアント、その家族、同僚、その他関連エージェントに対し無礼または不適当な言動を行ってはならない

・プログラムの権限を使用し裁判所の許可なしに子供を危険にさらすような行いをしてはならない

・CASAは子供を移動してはならない(車などに乗せてはいけない)

・課されたトレーニングは全て終了しなければならない

・1年以上の任期を途中で破棄してはならない

・機密事項を漏洩してはならない

・課された責任を放棄してはならない

・利益を求めてはならない

・申し込み用紙の偽造や人身調査に虚偽があってはならない

・裁判所に提出するレポートなど一切の書類に改ざんがあってはならない

・調査内容や事実を隠滅してはならない

・犯罪を犯してはならない

・虐待や育児放棄の容認・加担してはならない

・虐待や育児放棄児童相談所への報告を怠ってはならならい

・報告書は期日までに提出することを怠ってはならない

 

上記の宣誓書にサインして提出します

 

トレーニング1.3 動画 ジョンのストーリー


John's Story CASA

 

動画概要

11歳の時に叔母から顎をぶたれて骨折した

セラピストには怖くてその事は言えなかった

暫くして妹達と里子にだされた

初めて安心したんだ

でも母親のことがいつも心配だった

ヘロイン中毒で注射器の使い回しからHIVに感染していた

会いたくって毎晩のように泣いたのを覚えている

成長したら妹達とは別々の里親に送られた

新しい里親は男の子ばかりで自分が一番年下だった

その後すぐにマリファナを始めた

酒を飲み学校の成績も悪くなって行かなくなった

周りにも見捨てられた

奇跡的にリハビリのプログラムに入れたんだ

そこでCASAに出会った

洋服や食事など必要なものを手配してくれて

毎日励ましてくれた

なかなかマリファナを止められなかったけど

新しい学校に入って先生達が実の子のように心配してくれる姿をみて

少しずつ変わった

学校のテストで一番になれた

カウンセラーやソーシャルワーカーなどいろんな人が関わってくれた

CASAの担当者は僕の母親のように思えた

そして僕の人生はやっとまともになった

今までのことは絶対に忘れない

 

ジョンのストーリーから

1.誰がジョンのサーポートをしましたか?

2.CASAはジョンの人生にどんな影響を与えましたか?

3.もしもあなたがジョンのCASAだったら、このほかにどんな事ができると思いますか?

 

CASAのプログラムは州によって内容も規定も異なります。

しかしながら活動していく上で子供達の人生やその将来に良くも悪くも影響を与えることに間違いはありません。年齢を重ねていけばいく程、心を開いてくれるか、信頼してくれるか、アプローチが難しくなります。チームで話し合いながら少しずつでも確実に歩み寄れる方法を模索しましょう。 

 

所属するオフィスのCASAポリシーを確認しましょう。

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トレーニング1.2 ケーススタディ ブルックスファミリー

1.2

 ケーススタディ

ブルックスファミリーのケース

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 ケースナンバー 12-097542-4

児童の氏名:デシャワン・ブルックス

誕生日:3月12日

人種:黒人

性別:男子

現在の住居:里親

母親:トニ・ブルックス

母親の弁護士:サミュエル・ブルトン

父親:マイルズ・ブルックス

父親の弁護士:ジェイコブ・ベル

ケースワーカー:エミリー・パードン、ローレンス・キャリー

児童相談所の弁護士:メーガン・フラワー

経緯:

(10日前)病院から児童相談所への通報。生後2ヶ月になる幼児デシャワン・ブルックスが緊急搬送され「揺さぶられっ子症候群」を診断された。院内のソーシャルワーカーの父親に対する聞き取りによると、午後10時頃デシャワンにミルクを与えようとしたがぐったりした状態で起きなかった為救急に連れてきたという。診察したマリオン医師は激しい振動により意識が朦朧としていると即入院させ処置を行った。同日児童相談所へ通告。

(8日前)症状は回復しつつあるものの深刻な状態と判断しその他の医療検査を実施。警察権を持つ児童相談所の捜査の為退院後は一時的に里親に託されることが決定する。両親は刑事告訴を受けケースワーカーからの事情聴取を問われるも回答を拒否。

(6日前)マリオン医師は複数の検査結果よりデシャワンの容態は安定したとみなし退院を許可。同日デシャワンは里親のもとに託される。両親は揺さぶりがあったことを否定しその後も事件についての事情聴取には応じていない。父親のマイルズは現在レストランで皿洗いとして働いている。地元ではシェフとして働いていたが、引っ越してからはシェフの仕事が見つからなかった。仕事についてはストレスを感じておりただ家族を養う為に仕方が無く働いているとコメントしている。

 (5日前)ケースワーカーは母親のトニと話をすることができた。彼女は事件当日自宅におらず何も知らないと語っている。トニはコミニティ・カレッジで保育を学んでおり昼は働き夜は学校に行くという生活を送っている。

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上記裁判所は一時的に親権を両親から児童相談所へ移行しています。

次回の裁判での聞き取り日までにCASAは関係者に面会し情報収集しながらデシャワンにとって「一番最適な」条件を提出します。

 

CASAの面会から得た情報

マイルズ・ブルックス:その日は午後9時ごろデシャワンがベッドから落ちた。その際に体が大きく揺れたか、どこかを打ったのかもしれない。自ら揺さぶってはいない。母親のトニがいない間は自分が面倒をみており今まで問題はなかった。1年前に他州から引っ越してきて回りに家族や友人はいない。給与の良い仕事を探しているがなかなか見つからない。朝早くから夕方まで働き帰宅後は子供の面倒。自分が出来る限りのことは全てやっている。トニは夜間学校に行っているが、帰宅時間が遅く、たまに飲んで帰ってきたりで本当に学校にいっているかどうか疑っている。

 

トニ・ブルックス:少しでも生活をよくする為に大学をでていい仕事を探したい。デシャワンが病院に運ばれた日は自分は自宅にいなかったので何も知らない。自分はまだ若いので友達と遊びたい。学校帰りに友達とレストランに立ち寄ったりはするが悪い事はしていない。

 

マリオン医師:「揺さぶられっ子症候群」はベッドから落ちたくらいでは発症しない。強く何度も揺さぶられている。デシャワンの体にはその他虐待の兆候は見られなかった。発育状況にも問題はない。父親と母親は病院内で数回言い争いをしていた。

 

ブルックス家の隣人:ブルックス家と親交はないが赤ちゃんがよく泣いていると気にはなっていた。稀に夫婦喧嘩も聞こえる。ドラックやパーティなど悪い素行は見られない。顔を合わせれば挨拶はする。

 

その他事情を聞ける関係者はなし

 

<CASAから裁判所への提案>

・一時的な保護を見送り親権は両親のまま保留

・週一回のソーシャルワーカーの訪問

・デシャワンの育児検診を2週間おきに行う

・「揺さぶられっ子症候群」の治療及び検診を完治するまで続ける

・両親それぞれに「ストレスチェック検査」「心理検査」受けさせる

・検査結果によって必要なカウンセリングを設定する

・夫婦カウンセリングの実施

・子育て教室への参加を課す

・父親へ職業訓練所の推薦状を発行する

・3ヵ月後裁判所で二回目の聞き取りを行う

 

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このように時期を追っての対応を考え裁判所に推奨していきます

 

 

 

トレーニング1.1 自己分析

トレーニング1を開始します。

このセッションでは下記のような事項を学びます。

★トレーニングを通して何を学びたいか明確する

★CASAの役割とボランティアとしての子供への関わり方の制限を確認する

★米国の児童福祉の歴史を学ぶ

★CASAとして子供の弁護にあたる際に重要になる法律の内容を学ぶ

★なぜ虐待や育児放棄が起きるのかを考える

★子供にとって「一番最適なこと」と「最低限必要なケア」の定義について学ぶ

★児童福祉を通しての子供への影響を考える

★地域の児童福祉の現状、裁判のプロセスや関わる人達について調べる

★CASAに役立てることができる自身の価値観について話し合う

★ボランティア活動を行う態度、姿勢、価値観、スキルについて話し合う

★子供にとって「一番最適なこと」を導く為に必要な質問事項について考えていく

 

 

 

1.1

ディスカッション①

下記を3分で説明してください

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名前

なぜCASAになろうと思ったか

トレーニングを通して特に何を学びたいか2つ選んで答えてください

自身のことについてクラスの皆さんに知ってほしい事

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クラスメートの上記の説明に対し1分間の質問タイムを設けます

 

ディスカッション②

自身の子供の頃の話しを可能な範囲でシェアしてみてください。

良い家庭で育ったと思いますか?

悪い家庭で育ったと思いますか?

良い家庭とはどんな家庭ですか?

悪い家庭とはどんな家庭ですか?

それぞれの育った環境は大人になった今どのような影響を与えていると思いますか?