CASA カサ

アメリカでの児童虐待や育児放棄への対応についての報告

トレーニング1.10 虐待・育児放棄を理解する

虐待や育児放棄に気づくためには子供の生活に関わるあらゆる側面に目を向け、子供の感情が何に反応するかを見極める視点を持つことが重要です。

 

外見チェック

顔つき、表情、口元の動き、目の動き、腕や指先の動き、容姿、姿勢、態度、物腰など全体の様子を伺います。

 

内面チェック

会話を交わしたり、遊んだりする中で、子供が何に喜び逆に何に不安や恐怖を示すかを読み取ります。

 

査定中は虐待や育児放棄に関する負の状況や症状のみでなく、ポジティブな面も掘り出してみましょう。これらの査定の中で知力的、精神的、身体的また感情的の4つの範囲に分け分析していきます。

トレーニング1.9続  CASAの活動におけるジレンマ

ジレンマの定義:ある問題に対して2つまたそれ以上の選択肢が存在し、どのどちらかを選んでも何らかの不利益があり、態度を決めかねる状態。

 

CASAの活動を遂行するにあたり、子供に対しての最善の策を考えるが故に、様々なジレンマを経験します。どのようなケースがあるか見てみましょう。また自分ならどうするか、クラスで話し合いこのような場面に備えておきましょう。

 

ケース1

自分の担当であるナンシーに面会に行く際に里親に電話をしました。里親は面会を承諾。しかしナンシーは数時間前に歯医者で親知らずを抜いて痛みが酷く、面会に来る途中に角にある薬局で痛み止めとお水を買ってきてほしいと頼まれました。

 

 

ケース2

15歳のジェシカは父親をガンで亡くし、母親は刑務所に入っており施設で生活をしています。他に身寄りもなく学校にも馴染めず友達もいないようです。CASAだけが唯一信頼できる存在です。数日後に誕生日を迎えるジェシカが誕生日プレゼントにその日にピザを食べに連れていいってほしいと言ってきました。

 

ケース3

9歳のジョンは早く家に帰りたいと願っています。ジョンの母親パメラは薬物中毒でしたが、リハビル施設を退院し仕事も見つけ住まいを探し再出発の準備を始めています。明日の裁判でジョンの帰宅が決まりそうです。パメラの最後の面会時に彼女の車の中に薬物がありました。彼女は以前のものが社内に残っていただけだと言い報告しないでくれと泣いて頼んでいます。

 

CASA担当者としてあなたはどうしますか?

 

※CASAのルールでは物を買ったり提供したり何らかのサービスを行うことは禁止されています。

※CASAは事実を裁判所に報告することが義務付けられています。

※CASAはボランティアですのでルールに対する罰則は設けられていません。

 

これらのケースで正解を導くことはとても困難です。常識、良心、思いやり、同情などCASAも人間ですからいろいろな感情が湧き出てきます。

 

一番重要なのは必ずCASAの上司または児童相談所の担当者に報告・相談するということです。

 

ケース1はその日の面会をキャンセルし児童相談所の担当者に連絡、薬と水を準備してくれるよう依頼しました。里親に出されている子供の親権は一時的に児童相談所にありますので、彼らならサービスを提供することは可能です。CASAはそこを繋ぐ役目を果たしました。

 

ケース2の場合、CASAのチームリーダーが児童相談所へ連絡しジェシカをCASAオフィスに迎えて皆んなでピザパーティを開き誕生日を祝いました。

 

ケース3は報告書に事実を記載し裁判所に提出。裁判官はその事実を認識、当日薬物検査を実施、結果は陰性。母親の努力を認め最後のチャンスと念を押しジョンを帰宅させました。

 

気を付けないといけないのは連絡・報告をしても協力を得られなかったり、解決できなかったり結果が伴わない場合の気持ちの持ちようです。ケースを与えられ担当になったらCASAの役割、できること、できないことを前もって里親や子供に分かり易く説明することも大事です。また命にかかわるような一大事や法律に触れる行為を目撃した場合は迷わず警察に通報してください。

 

 

 

 

 

トレーニング1.9  Mentoring (メンタリング)と Advocacy (アドボカシー)

アメリカではMentoring (メンタリング)という言葉があり指導や助言を行う役割がこれに当てはまり、虐待や育児放棄の現場以外でも一般的に学校や地域において広く使われています。そのようなメンタリングの指導者はメンターとかアドバイザーと呼ばれ学校の職員、警察や保安官、教会のスタッフ等で結成されることが多くあります。

 

ここではMentor(メンター)の行動基準である「指導・助言・教師」とCASAが担うAdvocacy(アドボカシー)「擁護・弁護・指示」の違いについて説明します。多くの場面でこの二つの役割の行動基準が重複する部分があります。それはどちらも子供を助ける、サポートするという意味を持つためです。

 

しかしそこには決定的な大きな違いが複数存在します。それは子供との関係性です。Mentor(メンター)は立場や目線が子供より上であるのに対しAdvocay(アドボカシー)は子供に対して対等でいなければなりません。CASA=Advocay(アドボカシー)は子供を指導するのではなく、子供の立場とその目線から彼らが何を考え、思い、また何を願っているかを導き出します。またMentor(メンター)がその時点を観察し現在または近い将来に変化を作るのに対し、Advocacy(アドボカシー)はその先を見込み未来に対して行動を起こします。

 

この両方ともが社会の中で重要な働きを行いますが、CASA調査員としては自らがAdvocay(アドボカシー)であるということを念頭におき学んでいきましょう。下の表を参照下さい。

f:id:casa312aw:20180922033508j:plain

 

トレーニング1.8  (クラス) 子供との関係作り

CASAの活動を実施するにあたり一番必要なことは担当の子供たちとの関係や絆作りです。この関係性こそがCASAの役割を最大限に引き出す最重要素になってきます。

 

CASAは虐待や育児放棄を受けたすなわち被害者である子供たちにとって、誰よりも一番直接的でまた独立的な接触を持たなければなりません。子供たちが置かれた、また置かれていた状況を深く理解し、彼らが必要なものや彼らの願いをCASAが周りの大人達に伝えていく役割を担います。子供たちは必ず心を開いてくれるとは限りません。気持ちをストレートに表現する子は稀です。彼らの思いを読み取るには何より忍耐強さ、優しさ、そしてかなりの人生経験値が必要です。

 

子供たちに面会するときは目線を合わせて、彼らの言葉、しぐさ、表情、指先の動きなど細かなところまで見てあげてください。どうすれば信頼されるか、CASA味方であることを理解されるよう慎重に接触を図ります。

 

どんな状況下でもCASAが直接サービスを提供することはできません。例えばプレゼントを贈る、車に乗せ移動を助ける、家に招くなど、このような行為は禁止されています。必要なものがあればCASAオフィスや児童相談所に伝えましょう。自ら提供したい気持ちがあればCASAオフィスに贈呈しそこから渡してもらいます。移動が必要な際は児童相談所職員または里親等、移動補助が認められているスタッフにお願いします。CASAはあくまでボランティアですので万が一の責任追及を回避するためです。危険な状況でどうしても保護が必要な場合児童相談所または警察に届けてください。

 

 

トレーニング1.7  クラススタート

レーニング1.6まではオンラインコースを利用した自主学習です

ここからは1章のまとめとしてクラスで授業を受ける形になります

 

まず自分の順番に自己紹介、クラスメートの過去と名前を覚えましょう

将来のCASAチームメートです

学んだことも含めいろいろな意見交換ができる環境作りを心がけましょう

 

・なぜCASAになろうと思ったか

・クラスに来る前オンラインの1章で学んだこと又は疑問に思うこと

・このトレーニングから何を期待しているか

・CASAになる上での心配な部分

これらをシェアすることでクラスをスタートします

 

 

 

 

トレーニング1.5続 最適な環境

アメリカのCASAで一番重要なのは「子供にとってのBest Interest」という理念です。

Bestを辞書で検索すると最善、最高、最上という言葉がでてきます。またInterestは興味や関心、利害と訳されます。CASAで使われる「Best Interest」のニュアンスはこれらの日本語とは少し異なったものになり、「この時点で託された選択肢の中で子供にとって最も有益と言える対策」ということを意味します。

家庭とは家族形態、収入、住んでいる地域、出身地(国)、文化や信仰などでそれぞれ異なったものであり、一つとして同じものはなく、その事実をリスペクトしなければなりません。またそれを甲乙、善悪、高低を評価するものでもありません。さらに児童相談所やCASAオフィスが常に最高の避難場所を確保することも困難です。これらの複雑な条件の中から対象者の子供にとって「最適な対策」を対象者の子供に準備すること、これが「Best Interest」の理念の解釈です。

 

ここでの「Best Interest」を対象者の子供にとって「最適な対策」と受け止め下記の3つが主軸の行動理念となります。

・安全な家庭

・永続的な場所を

・できる限り早く準備し提供する

 

CASAは常に子供の目線で子供のために何がベストか?何が最適かを考えます。両親のため、大人や学校の都合でもなく、児童相談所や社会のためでもなく、子供のため。

 

「子供のため」の指標 = Minimum Sufficient Level of Care (MSL) = 最低限のケア

 

虐待や育児放棄により子供を家庭から引き離すことはとても大きな影響を与えます。

時には子供に深刻なトラウマが生じてしまう恐れもあります。

 

アメリカの法律でも「どのような組織でも安全が確保できれいれば子供を家に残すこと」が定義とされています。

子供が家庭から引き離される場合は、上記のMinimum Sufficient Level of Care (MSL)という最低限の子育てレベルを記載した規定を満たすときのみです。

そしてまた子供が家庭に戻される場合もこの同じ規定を用い戻せるかどうかを判断する基準となります。

 

親が下記の基本的な必要事項を満たしていますか?

  • 物理的な世話 (食事、服や靴、住まい、医療、安全、保護)
  • 精神的な世話 (親と子の関連性、絆、信頼)
  • 成長的な世話 (教育、障害児への特別な支援等)

 

具体的な例:

しつけについて過去にはアメリカでもベルトで叩いたりする体罰は20世紀中ごろまで広く当たり前に行われていました。しかし21世紀の今は体罰は虐待と認識してください。体罰の与える長期的な身体的、精神的影響が明らかになった為、現代の親は「Time Out」など※罰として短時間的隔離を行うこと体罰のないしつけを実施します。

学校については不登校やホームスクール等で多様化されていますが、子供が必要最低限な社会で生きている為の知識を学ぶ機会を奪ってはいけません。医療について必要な予防接種、検診、歯や目の治療(めがね等)は最低限必要なケアの範囲です。